「去年うまくいったので、今年も同じ内容で。」
一見すると、合理的な判断です。
すでに進め方がわかっている。 社内でも説明しやすい。 起用する人も、制作する内容も、予算の組み方も、前回を基準に考えられる。
でも、SNSにおける一年前は、かなり前です。
媒体の使われ方が変わる。 見ている人の行動が変わる。 起用したい人の影響力も、費用も変わる。 去年はなかった選択肢が、今年は必要になる。
前年と同じ計画を立てることはできても、前年と同じ条件を用意することはできません。
だから私たちは、「去年うまくいった」という理由だけで、今年も同じ施策を選ぶことには慎重です。
01.一年前と、同じ人ではない。
昨年起用したインフルエンサーに、今年も依頼する。
その人と企業の相性がよく、発信の内容も自然で、結果もよかったのであれば、継続してお願いする理由はあります。
ただ、同じ人に依頼するからといって、同じ施策になるとは限りません。
一年の間に、フォロワーが増えているかもしれない。 見ている人の属性が変わっているかもしれない。 発信する内容や、得意な企画が変わっているかもしれない。 企業からの依頼が増え、起用費用が上がっていることもあります。
昨年と同じ予算で依頼できるとは限りません。
費用が上がっていても、その人を起用する価値が高まっている場合もあります。
一方で、その金額なら別の人を複数起用する方がいいかもしれない。 広告配信や自社のCreativeに予算を回す方が、目的に近づくかもしれない。
昨年よかった人を、今年も呼べるか。
そこで判断を終わらせず、今年の条件でも、その人が最適なのかを考え直します。
02.媒体の優先順位も変わる。
SNSの施策は、人選や企画だけで決まるものではありません。
どの媒体で、誰に、どう届けるか。
この前提も、一年あれば変わります。
たとえば、今年、20代に向けた施策を考えるなら、私たちはTikTokを外しません。
すべてをTikTokだけで実施する、という意味ではありません。
商品や目的によって、Instagramが担う役割もある。 検索や比較の受け皿として、自社サイトが必要なこともある。 接触した人にもう一度届けるために、広告を組み合わせることもあります。
ただ、20代に届けたいと言いながら、昨年の計画をそのまま引き継ぎ、TikTokを検討に入れない。
それは、今年の施策として十分なのか。
前年踏襲の怖さは、去年やったことを続けてしまうことだけではありません。
今年やるべきことが、最初から選択肢に入らないことです。
03.昨年の数字だけでは、今年を決められない。
前年の実績は、重要な判断材料です。
誰の投稿が届いたのか。 どの切り口に反応が集まったのか。 広告を加えたことで、どこまで広がったのか。 そこからプロフィールやサイトへ、どれだけ動いたのか。
ただし、前年の数字は、前年の条件で出た結果です。
起用した人。 投稿した媒体。 公開した時期。 配信した広告費。 競合の動き。 商品への関心。 プラットフォームの仕様。
そうした条件が重なって、結果が出ています。
数字だけを抜き出して、「去年これだけ届いたから、今年も同じくらい届く」と考えることはできません。
見るべきなのは、結果の大きさだけではなく、どの条件がその結果をつくったのか。
そして、その条件が今年も成立するのかです。
04.実施する前に、いくつかの可能性を並べる。
だから、前年と同じ施策を実施する前に、一度シミュレーションします。
同じ人を、今年の費用で起用した場合。 人選を変え、複数の発信から届けた場合。 インフルエンサーの投稿に、広告配信を組み合わせた場合。 自社アカウントのCreativeを増やした場合。 TikTokを含めて、媒体の配分を組み直した場合。
それぞれの案で、何を狙えるのか。 どこに不確実さがあるのか。 同じ予算なら、どの組み合わせが目的に合っているのか。
始める前に考えても、結果を完全に予測することはできません。
SNSは、実際に出してみなければわからないことが多い。
だからこそ、事前に考えられることまで曖昧にしたまま、実施には進みたくありません。
必要であれば、最初から大きく賭けるのではなく、小さく試す。
反応を見て、企画を変える。 配信先を変える。 人選や予算の配分を見直す。
事前のシミュレーションと、実施後の検証をつなげていきます。
05.経験があるから、同じことをするわけではない。
経験がある会社に依頼する意味は、過去の成功例をもう一度出してもらうことだけではないと思っています。
企画を考えた人がいる。 インフルエンサーと向き合ってきた人がいる。 Creativeをつくった人がいる。 広告を配信し、数字を見てきた人がいる。 クライアントと結果を振り返ってきた人がいる。
それぞれの経験を持ち寄り、今年の条件で判断し直す。
前回うまくいった理由の中で、今も残っているものは何か。 変わったものは何か。 新しく検討に入れるべきものは何か。
一人の感覚だけではなく、過去の経験とデータを使って、複数の可能性を比べる。
そこに、組織として仕事をする意味があります。
経験があるから、同じことを繰り返すのではありません。
経験があるから、去年と今年の違いに気づける。 その違いを踏まえて、実施する前に疑い、考え、検証できる。
私たちは、そのために過去の仕事を蓄積しています。
06.去年と同じ施策が、残ることもある。
検討した結果、昨年と同じ人に依頼し、同じ媒体で、近い企画を続けることもあります。
その選択が、今年の条件でも最も目的に合っているなら、変える必要はありません。
ただし、それは前年踏襲ではありません。
今年の費用を確認した。 媒体の変化を見た。 別の人選や予算配分とも比べた。 今年の目的に照らして、もう一度選んだ。
同じ施策に見えても、判断の過程は違います。
「去年よかったから、今年もやる。」
そこから、もう一歩進めたい。
去年よかった施策は、今年も本当にいいのか。
一年前の答えを持ってくるのではなく、今年の条件で、もう一度答えを出す。
